解らない

 とびきり高いとこにいる
 とびきり低いとこにいる
 とびきり離れたとこで
 とびきり寂しいところにいる
 とびきり抜けた頭で
 とびきり上げた口角で
 とびきりたのしそうにわらう

 とびきり強い風が吹いたって
 なんにもないようにいる
 へっちゃらに 涼しい顔でいる
 揺らぎもしない彼は篝火なのか
 プロメテウスが盗んだ火種のように
 白く透明な火が煌々と点いているのか
 奥付にはもう一人分の余白があるのか

 色を足すなら雪解けの薄緑がいい
 永い冬を割り解かして芽がはえる
 春の一番は俄雨をつれ
 ましろく堅い冬を抜け去る

 春の薄い月がとびきり高いとこに見えた
 草木はさやめき微笑みにゆれる
 とびきり高く とびきり離れて
 とびきり寂しいところにもうずっといる
 あの人はどんな風に笑うのか